『ビジョナリー・カンパニーZERO』を読んだ理由
株式会社USを設立して2年が経過した。個人事業と法人を併営する体制は回り始めたが、「このまま規模を追うべきか」「原則を固めるべきか」という判断に迷う場面が増えた。
ジム・コリンズの『ビジョナリー・カンパニーZERO』は、シリーズの原点として創業期〜小規模段階の経営原則をまとめた一冊だ。「偉大な企業になる前にやるべきこと」という副題に惹かれて手に取った。
読後、本書が示す原則のうち3つを自社の実務に適用した。この記事では、どの原則をどう実装したか、2年目の実務設計として記録する。
原則1:規模の前に「誰と」を決める
本書の第一原則は「適切な人をバスに乗せる」だ。何をやるかより、誰とやるかを先に決めろという主張である。
私の場合、法人設立時に「誰を株主にするか」「誰と取引するか」という選択があった。規模を追うなら、案件数を増やすために新規取引先を開拓する選択肢もあった。だが、実際には既存の信頼関係がある取引先との継続案件を軸に据え、新規開拓は後回しにした。
具体的には、徳島案件を中心とした取引先1社との関係を深める方向に舵を切った。単価交渉・納期調整・品質基準のすり合わせを繰り返し、「次も呼ばれる関係」を作ることに時間を使った。結果、案件数は増えていないが、継続率と単価は上がっている。
本書の言う「適切な人」とは、能力より価値観の一致を指す。私は「対等な関係で仕事ができる相手」を基準に選んだ。不当な扱いを受ける可能性がある案件は、どれだけ単価が良くても断るルールを実装している。
原則2:「何をやらないか」を決める
第二の原則は「針鼠の概念」の前段階として、「何をやらないか」を明確にすることだ。小規模企業は資源が限られているため、選択肢を絞らなければ何も達成できない。
私は2年目に「やらないことリスト」を作った。具体的には次の3項目だ:
- 新規営業はしない(既存取引先との関係深化に集中)
- 単価基準を下回る案件は受けない(工数に対する対価が合わない案件の排除)
- 家族イベントと衝突する案件は断る(時間配分の優先順位を明確化)
このリストを作ってから、判断のブレが減った。案件の打診があったとき、リストに照らせば即座に可否を判断できる。迷う時間が減り、断る際の罪悪感も薄れた。
本書は「何をやるか」より「何をやらないか」のほうが重要だと繰り返す。私はこれを「撤退基準の明文化」として実装した。やらないことを決めるのは、やることを決めるより難しいが、効果は大きい。
原則3:20マイル行進——一定ペースの継続
第三の原則は「20マイル行進」だ。好調時も不調時も、一定ペースで進み続けるという規律である。爆発的成長より持続的成長を選べという主張だ。
私はこれを「月次決算の習慣化」として実装した。毎月末に損益を確認し、翌月の経費予算を決める。繁忙期も閑散期も、この習慣は変えない。
具体的には、freeeで月次試算表を出力し、役員報酬・経費・利益の3項目を記録する。繁忙期に利益が出ても増やさず、閑散期に赤字が出ても慌てない。年間を通して均した利益率を維持することを目標にしている。
本書は「一貫性」を強調する。私は「月次決算を欠かさない」という一貫性を2年間守った。これにより、資金繰りの予測精度が上がり、税理士との会話もスムーズになった。
20マイル行進の本質は「自分でペースを決める」ことだ。市場や競合に引きずられず、自分の持続可能なペースで進む。これが小規模企業の強みだと実感している。
原則の実装で得た副産物:判断基準の言語化
3つの原則を実装して得た最大の副産物は、「判断基準の言語化」だ。
- 誰と仕事をするか:対等な関係か、信頼関係があるか
- 何をやらないか:単価・時間配分・家族優先の3基準
- どう続けるか:月次決算を欠かさない
これらの基準を明文化したことで、意思決定のコストが下がった。案件の打診・時間の使い方・経費の支出、すべてに判断の軸ができた。
本書は「原則を固めてから規模を追え」と繰り返す。私はまだ規模を追う段階ではないが、原則を固める段階は一巡した。3年目以降、この原則が機能するかを検証する段階に入る。
まとめ:小規模企業が偉大になる前にやるべきこと
『ビジョナリー・カンパニーZERO』から学んだ3つの原則を、法人設立2年目の実務に適用した記録をまとめた。
- 原則1:規模の前に「誰と」を決める(既存取引先との関係深化)
- 原則2:「何をやらないか」を決める(やらないことリストの明文化)
- 原則3:20マイル行進(月次決算の習慣化)
原則の実装は、規模の拡大より地味だが、判断基準の言語化という副産物を得た。小規模企業が偉大になるかどうかは分からないが、原則を固めてから次の段階に進む設計は機能している。
3年目以降、この原則が持続可能かを検証する。