マルチステージ人生論を38歳時点で実装する意味
『LIFE SHIFT』(リンダ・グラットン、アンドリュー・ステップ著)を読んで最も刺さったのは「教育→仕事→引退」の3ステージモデルが崩壊し、複数のステージを行き来する人生設計が標準になるという指摘でした。
私は現在38歳。個人事業主として約20年のキャリアを持ち、5年前に法人(株式会社US)を設立して個人事業と法人を併営しています。50歳を12年後のゴールと定め、「呼ばれて行く働き方」への移行を設計している段階です。
この記事では、LIFE SHIFTの概念を自分の人生設計に落とし込んだ「3ステージ設計」と、各ステージでの時間配分・資産形成・役割転換の実務論点を整理します。
3ステージ設計の全体像
私が設計した3ステージは以下の通りです。
ステージ1:個人事業単独期(18歳〜33歳・15年間)
- 時期:18歳で業界に入り、個人事業主として技術を磨いた期間
- 時間配分:現場稼働が最優先。繁忙期(春・秋)は週6〜7日稼働、閑散期に休養と勉強
- 資産形成:収入の大半は生活費と事業投資(工具・車両・資格取得)に消えた時期。貯蓄習慣の構築が主眼
- 役割:プレイヤー専念。自分が動いて稼ぐモデル
この時期は「自分が止まれば収入が止まる」構造でしたが、技術と信頼を積み上げる土台作りの期間として位置づけています。
ステージ2:法人併営期(33歳〜50歳・17年間)
- 時期:法人設立(33歳)から50歳まで。現在38歳で折り返し前
- 時間配分:現場稼働を継続しつつ、法人運営・記帳・契約管理・融資面談など間接業務が増加。家族時間も優先度が上がる
- 資産形成:NISA・iDeCo・小規模企業共済で積立を本格化。配当所得の基盤を作る時期
- 役割:プレイヤー+マネージャー。個人事業で現場に立ちつつ、法人で事業構造を設計する二刀流
このステージの前半(33〜43歳)は「43歳サイドFIRE」を目標に、配当と副業で生活費の一部をカバーできる状態を目指しています。後半(43〜50歳)は現場案件を厳選し、家族イベント優先の働き方にシフトする設計です。
ステージ3:呼ばれて行く期(50歳以降)
- 時期:50歳以降。完全リタイアではなく「呼ばれた現場のみ受ける」モード
- 時間配分:年1〜2回の厳選案件のみ。家族イベント最優先で、社会接続を維持する程度の稼働
- 資産形成:配当所得が生活費を賄う状態。追加の資産形成より、使う設計にシフト
- 役割:技術顧問的ポジション。「必要とされる場所があれば行く」スタンスで、金稼ぎより社会接続が主動機
LIFE SHIFTでは「エクスプローラー」(探索期)や「インディペンデント・プロデューサー」(独立生産者期)といったステージが提示されていますが、私の場合はステージ3が「社会接続維持期」として機能する設計です。
各ステージの移行タイミングと判断基準
ステージ1→2の移行(法人設立の判断)
33歳で法人を設立したのは、以下の3つの条件が揃ったタイミングでした。
- 個人事業の収益が安定し、法人税率の方が有利になった:個人事業の所得が累進課税で高い税率に達し、法人化による節税効果が見込めた
- 信用力の必要性:融資・契約・採用などで「法人格」が求められる場面が増えた
- 事業構造の複線化:個人事業で現場に立ちつつ、法人で別の収益源や事業承継の選択肢を持ちたかった
法人設立は「稼ぎが増えたから」ではなく、「事業構造を変えるタイミングが来たから」という判断でした。
ステージ2→3の移行(呼ばれて行く働き方への転換)
50歳で「呼ばれて行く働き方」に移行する条件は、以下の3つです。
- 配当所得が生活費を賄える状態:年間配当が目標額に到達し、働かなくても生活が回る基盤
- 信頼と実績ある取引先との関係維持:新規開拓はせず、既存の対等な関係の取引先から「来てほしい」と言われる案件のみ受ける
- 家族イベント優先の判断基準が確立:子供の年齢・イベント数に応じて稼働頻度を調整できる状態
このステージでは「収入断絶」の恐れが薄れる代わりに、「社会からの断絶」が新たな恐れになります。LIFE SHIFTでは「無形資産(生産性資産・活力資産・変身資産)」の重要性が強調されていますが、呼ばれて行く働き方は「活力資産」を維持する装置として機能する設計です。
時間配分の変化:家族時間・事業時間・自己投資のバランス
LIFE SHIFTでは「時間の使い方」が各ステージで変わることが前提とされています。私の場合、以下のように変化する設計です。
ステージ1(18〜33歳):事業時間が最優先
- 現場稼働:70%
- 自己投資(資格取得・勉強):20%
- 家族時間:10%
この時期は「技術と信頼の蓄積」が最優先で、家族時間は最小限でした。
ステージ2前半(33〜43歳):事業時間と自己投資のバランス
- 現場稼働:50%
- 法人運営・記帳・融資準備:20%
- 自己投資(読書・サイト構築・資産形成):20%
- 家族時間:10%
法人併営で間接業務が増え、現場稼働の比率が下がりました。家族時間はまだ最小限ですが、子供が保育園児のため「量より質」を意識しています。
ステージ2後半(43〜50歳):家族時間の優先度が上昇
- 現場稼働(厳選案件のみ):30%
- 法人運営・資産形成:20%
- 自己投資:20%
- 家族時間:30%
43歳サイドFIRE達成後は、案件を厳選して家族イベント優先にシフトする設計です。子供が小学生〜中学生になる時期で、「一緒にいられる時間」が減り始めるタイミングでもあります。
ステージ3(50歳以降):家族時間と社会接続のバランス
- 現場稼働(年1〜2回):5%
- 法人運営・資産運用:10%
- 自己投資・趣味:30%
- 家族時間:55%
配当所得が生活費を賄う状態になれば、時間の大半を家族と自分のために使えます。現場稼働は「社会接続の維持」として最小限に留める設計です。
LIFE SHIFTの概念を実装するときの実務論点
論点1:各ステージの「終わり方」を設計する
LIFE SHIFTで印象的だったのは、「ステージの終わり方」を事前に設計する重要性です。私の場合、ステージ2→3の移行条件(配当額・取引先関係・家族判断基準)を明文化しておくことで、「いつまで働くか」の判断を属人的な感情に委ねない設計にしています。
論点2:無形資産の棚卸しを定期的に行う
LIFE SHIFTでは「生産性資産(スキル・知識)」「活力資産(健康・人間関係)」「変身資産(自己認識・多様性)」の3つの無形資産が強調されています。私は年1回、これらの棚卸しを行い、「次のステージで何が必要か」を確認する習慣を作りました。
例えば、ステージ3で「呼ばれて行く」ためには、ステージ2で「信頼と実績」という生産性資産を積み上げておく必要があります。逆に、ステージ3では「健康」という活力資産の優先度が上がるため、ステージ2後半から運動習慣を強化する計画です。
論点3:「完全リタイア」を目指さない選択
LIFE SHIFTでは「引退」という概念が曖昧になると指摘されていますが、私も「完全リタイア」は目指していません。50歳以降も「呼ばれて行く働き方」で社会接続を維持する設計にしたのは、『DIE WITH ZERO』(ビル・パーキンス著)の「記憶の配当」と「使う設計」の概念を組み合わせた結果です。
完全に働かなくなると、「社会からの断絶」という新たな恐れが生まれます。年1〜2回の厳選案件で「必要とされる場所がある」という実感を維持するのが、ステージ3の設計意図です。
まとめ:マルチステージ設計は38歳からでも間に合う
LIFE SHIFTを読んで実装した3ステージ設計(個人事業単独期・法人併営期・呼ばれて行く期)は、38歳時点で「50歳までの12年間」を逆算して組み立てたものです。
各ステージの移行条件・時間配分の変化・無形資産の棚卸しを明文化することで、「いつまで働くか」「何のために働くか」の判断を属人的な感情に委ねない設計にしています。
マルチステージ人生論は「100年生きる前提」の話ですが、38歳から50歳までの12年間を設計するだけでも、十分に実装価値があると感じています。あなたも自分の人生をステージで区切り、各ステージの終わり方を設計してみてはいかがでしょうか。
関連書籍
LIFE SHIFT(ライフ・シフト)——100年時代の人生戦略
マルチステージ人生論の原典。無形資産の概念が、各ステージの設計に直結します。
DIE WITH ZERO——人生が豊かになりすぎる究極のルール
「使う設計」と「記憶の配当」の概念が、ステージ3の働き方設計の補完軸として機能しました。