プラント定修で20年見てきた『辞めていく人』の共通点3つ:NDT検査員が語る現場の生存戦略

現場で20年:毎年誰かが辞めていく

石油化学プラントの定期検査(定修)に18歳から携わって約20年。毎年春と秋の繁忙期に major Japanese refineries を回っていると、必ず「今年で辞める」という話を耳にする。

入社3ヶ月の新人もいれば、10年選手もいる。年齢も動機もバラバラだが、辞めていく人たちにはいくつかの共通パターンがあることに気づいた。逆に言えば、そのパターンを避ければ現場で長く働ける。

今回は私がNDT検査員として見てきた「辞めていく人の共通点」と、現場で生き残るために意識してきたことを書く。

共通点①:現場の理不尽を「仕方ない」で飲み続ける

定修現場には理不尽が多い。天候に左右される屋外作業、突然の工程変更、深夜シフトの連続。クライアント都合で予定が覆ることもある。

ここで「仕方ない」と全部飲み込む人は、1〜2年で限界が来る。理不尽を受け入れるのではなく、構造的に回避できるか・交渉の余地があるかを見極める習慣がないと、消耗だけが積み重なる。

私の場合、検査監理のポジションに移行してから「受けない案件」の基準を明確にした。業界相場を下回る単価、家族イベントと衝突する日程、対等な関係が築けない取引先。これらは事前に断る。

『エッセンシャル思考』(グレッグ・マキューン)で学んだ「より少なく、しかしより良く」の考え方は、現場の案件選別にそのまま応用できる。全部引き受けるのではなく、引き受けるべき仕事を選ぶ。

共通点②:技術だけで勝負しようとする

NDT検査は技術職だが、技術「だけ」で食べていくのは難しい。特にVT(視覚試験)やUT(超音波試験)は、手法そのものに資格制度がなかったり、Level 2程度では差別化が弱かったりする。

辞めていく人の多くは「もっと技術を磨けば評価される」と信じて、横展開や営業活動をしない。結果、案件が途切れたときに打つ手がなくなる。

私が意識してきたのは技術×営業×記録の三角形。検査技術は当然磨くが、それと同時に「この人に頼みたい」と思われる信頼関係を築く(営業)、実績を言語化して残す(記録)。この3つが揃って初めて、継続的に案件が回ってくる。

株式会社USを設立したのも、個人の技術を「法人としての信用」に変換する狙いがあった。名刺一枚で取引先の反応が変わる。

共通点③:家族・健康を後回しにする

定修は春秋の繁忙期に集中する。この時期は月の半分以上が出張、朝6時出勤・夜10時帰宅という日も珍しくない。

ここで家族や健康を「今は仕方ない」と後回しにし続けると、繁忙期が終わったときに家庭が壊れている。体調を崩して長期離脱する人も見てきた。

私は子供が保育園児の今、意識的に「家族イベント優先」のラインを引いている。運動会・発表会・誕生日は仕事を入れない。これは『DIE WITH ZERO』(ビル・パーキンス)の「経験の配当」の考え方に近い。

子供が小さい時期の時間は、後から取り戻せない。仕事はいつでもできるが、子供の成長は待ってくれない。このバランス設計ができないと、現場では長く続かない。

生き残るために必要なのは「辞める基準」を持つこと

現場で20年続けてこられたのは、技術力だけではない。辞める基準を明確に持っていたからだと思う。

  • この単価以下は受けない
  • この条件なら断る
  • この時期は家族優先

この基準がないと、全部引き受けてしまう。全部引き受けると、理不尽も消耗も全部飲み込むことになる。

INTJという性格タイプもあって、私は「境界線を引く」ことに抵抗がない。むしろ境界線を引かないと、自分が壊れる。

今38歳。50歳で「呼ばれた現場のみ受ける」働き方に移行する設計を進めている。そのためには、今のうちに「受けない基準」を固めておく必要がある。

まとめ:現場を続けるには「続けない選択」が必要

プラント定修の現場で辞めていく人には、共通のパターンがある。

  1. 理不尽を「仕方ない」で飲み続ける
  2. 技術だけで勝負しようとする
  3. 家族・健康を後回しにする

逆に言えば、この3つを避ければ現場で長く働ける。そのために必要なのは「続けない選択」を明確にすることだ。

全部引き受けるのではなく、引き受けるべき仕事を選ぶ。技術だけでなく、信頼と記録を積み上げる。家族の時間を後回しにしない。

この設計ができれば、現場は20年でも30年でも続けられる。

関連書籍

エッセンシャル思考——最少の時間で成果を最大にする

グレッグ・マキューンの『エッセンシャル思考』は、「より少なく、しかしより良く」を実践するための方法論。現場の案件選別や、家族との時間配分を考えるときの基礎OSとして繰り返し読んでいる。

DIE WITH ZERO——人生が豊かになりすぎる究極のルール

ビル・パーキンスの『DIE WITH ZERO』は、「使う設計」の理論。50歳FI論や家族時間の優先順位を考える際、「ゼロで死ぬ」発想は時間配分の意思決定に効いた。

参考

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